研究課題/領域番号 |
18592009
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
五十嵐 武 昭和大学, 歯学部, 教授 (10159585)
|
研究分担者 |
森崎 弘史 昭和大学, 歯学部, 講師 (30317581)
有本 隆文 昭和大学, 歯学部, 助手 (60407393)
|
キーワード | Streptococcus mutans / Sortase / バイオフィルム / ショ糖依存性付着 / ショ糖非依存性付着 / う蝕予防 / Sorting signal / 表層蛋白質 |
研究概要 |
我々はこれまで、S.mutansのSortase欠損株(SrtA^-株)を用いた研究で、SrtAがSorting signalをもつ表層蛋白質(PAc、GbpC、Dex)の細胞壁結合を触媒し、その機能発現を支配していることを明らかにしてきた。そこで本年度は、SrtA^-株における表層蛋白質(WapAとFruA)の細胞局在性とその機能を調べ、さらに野生株(109c株)とSrtA^-株およびSrtAの支配下にある7種の表層蛋白質欠損株のバイオフィルム形成能について検討した。 S.mutans109c株のSrtA^-株と表層蛋白質欠損株は、対応遺伝子の相同組換えによる挿入不活化により作成した。表層蛋白質の局在性は、特異抗体を用いたWestern blotで確認した。S.mutans株のバイオフィルム形成は、ショ糖の存在下または非存在下でのプラスチックへの付着により判定した。 S.mutans109c株のWapAとFruAの局在性は、SrtAの欠損で細胞表層から培養上清へと変化した。109c株とSrtA^-株は共にフルクタン発酵能を保持していた。静置培養では、ショ糖非存在下でSrtA^-株の付着が109c株よりも顕著に減少し、WapA^-とPAc^-株で若干減少していた。また、ショ糖存在下では供試菌株間で付着に差が見られなかった。一方、流動培養では、ショ糖存在下でSrtA^-株の付着が109c株よりも顕著に減少し、次いでGbpC^-株の付着が減少していたが、その他の変異株では変化がなかった。 以上の結果より、SortaseがS.mutansのWapAとFruAの細胞壁への結合を触媒していることが明らかになった。さらに、SortaseはS.mutansの表層蛋白質の局在性を支配することで、ショ糖非依存性ならびにショ糖依存性付着に関与し、S.mutansのバイオフィルム形成を促進していることが示された。このことより、S.mutansのSortaseは口腔バイオフィルム感染症の1つであるう蝕を予防する上で有用な標的酵素となることが示唆された。
|