研究概要 |
我々はこれまでに口腔内のう蝕原性細菌(Streptococcus mutans)のSortase酵素がS.mutansの感染に関わる複数の表層蛋白質を支配していることを明らかにした。さらに、S.mutansのSortase欠損株では表層蛋白質の局在性が変化し、それに伴い隔蝕原性に関わる性質も変化することを明らかにし、Sortaseが蠕蝕予防の標的酵素として有用であることを示唆してきた。これをもとに、平成19年度は、グラム陽性口腔病原性細菌で口腔および全身疾患への関連が示唆されているStreptococcus gordoniiに着目し、S.gordoniiのSortaseの解析とSortase支配下にある表層蛋白質の機能解析を試みた。実験にはS.gordonii Challis株を使用した。S.gordoniiのSortase欠損株はゲノム配列情報から入手したSortese遺伝子配列をもとに相同組換えにより作成し、野生株との表層蛋白質の局在性の変化を比較した。その結果、複数の蛋白質がSortaseの支配下にあることが明らかになり、そのうち2つの蛋白質(FructosidaseとNuclease)の同定に成功した。このうちFructosidaseの解析がほぼ終了し、次の性質が明らかになった。(1)塩基配列:4,224塩基対,(2)アミノ酸配列:1,408アミノ酸残基,(3)分子量:160kDa,(4)等電点,(5)基質特異性:レバンに特異的でイヌリンをわずかに分解,(6)作用様式:エンド型,(7)局在性:細胞壁に結合して細胞表層に局在,(8)至適pH:5.5,(9)至適温度:50℃,(10)活性中心:460番目のアスパラギン酸。以上の結果から、S.gordoniiの本酵素はSortaseの支配下にあるexo-b-D-fructosidaseであり、プラークバイオフィルム内のフルクタン、特にレバンを栄養源として接種し、プラークバイオフィルム形成に関わっていることが明らかになった。
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