研究概要 |
口腔内に生息する病原性グラム陽性球菌であるStreptococcus sobrinusのデキストラン依存性凝集能は、本菌の重要なう蝕原性因子の1つと考えられている。本年度はS. sobrinusのデキストラン依存性凝集に関わる表層タンパク質を解析し、そのタンパク質がSortase酵素の支配下にあることを明らかにした。 S. sobrinus 6715株への変異導入は化学変異物質(1-methyl-3-nitro-1-nitrosoguanidine)を用いて行った。次にこれらの変異株からデキストラン依存性凝集能を欠如した変異株スクリーニングした。さらに変異部位の塩基配列を決定し、そのタンパク質を同定すると共に、Sortase酵素との関係を調べた。表層蛋白質の局在性は特異抗体を用いたWestern blot法で行った。 デキストラン凝集能を消失したS. sobrinus 6715株の化学変異株(NUM99株)の塩基配列決定の結果から、本菌のデキストラン依存性凝集に関わる4つのタンパク質(gbp1, gbp2, dblA, dblB)を検出し、それらの塩基配列を決定した。このうちgbpl, gbp2, dblAの塩基配列はいずれも、6715株(野生株)のものと100%の相同性を示し、変異が確認されなかった。しかし、dblB遺伝子の塩基配列はその5'末端が欠失しており、そのタンパク質上ではLPXTG motifを含むC末端領域の欠損を示した。Western blot解析の結果、変異DblBタンパク質の局在性は、細胞表層から培養上清へと変化していたことが明らかになった。 以上の結果から、S. sobrinus株のデキストラン依存性凝集に関わる4つのタンパク質のうち、DblBがその凝集に密に関係していることが明らかになった。さらに、この凝集はDblBの膜局在性を触媒するSortase酵素の支配下にあることが明らかになった。
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