研究概要 |
扁平上皮癌由来のCa9-19細胞におけるSLPIを抑制し,pIgRを発現するNUSD-1細胞におけるpIgRの発現とNF-κBの活性化との関係について検索を行った。 NUSD-1細胞およびCa9-22細胞をconfluentになるまで培養し、INF-γなどで細胞を10,20,30,60分間刺激した後、通法に従い核抽出物を準備する。これをSDS-PAGEで泳動した後、nylon membraneに転写した後,membraneをNF-κB、IKBα、IκBβ、Iκκα、IκκβなどNF-κBの活性化に関与する抗体を用いてwestern blotを行い、NUSD-1細胞のpIgR蛋白の産生に関与する転写活性について検討した。 その結果、NUSD-1細胞およびCa9-22細胞においてNF-κBおよびIκκαの発現をINF-γの刺激の有無におよび刺激時間に関係なく認めたが、Iκκβの発現はNUSD-1細胞では明らかな発現を認めたが、Ca9-22細胞では明らかな発現を認めなかった。さらに、IκBβはCa9-22細胞では強く、NUSD-1細胞では弱い発現を示した。これらの結果はSLPIがIκBβの発現に関与することと符合し、pIgRの発現に関与している事が示唆された。 また、腸管の上皮細胞におけるpIgRとSLPIとの組織局在を免疫染色で検索を行った。エタノール固定・パラフィン切片を脱パラフィンした後、抗ヒトSLPI抗体で1時間反応させ、PBSで洗浄し、RITC標識抗ウサギIgG抗体と1時間反応させた。切片をPBSで洗浄した後、FITC標識抗ヒトSC抗体と1時間反応後、蛍光顕微鏡で観察した。検索の結果、SLPIとpIgRの陽性部位は両者とも上皮細胞の胞体内にみられるが、発現を示す細胞は相補的であった。この結果から正常組織においてもpIgRの発現にSLPIの関与が示唆された。
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