研究概要 |
SLPIおよびpIgRの組織内局在についてヒト腸管(凍結切片、ホルマリン固定パラフィン包埋切片)およびヒト唾液腺(ホルマリン固定パラフィン包埋切片)を用いて酵素抗体法または蛍光抗体法による免疫組織染色法を用いて検索を行った。 その結果、ヒト腸管においてpIgRは上皮細胞の細胞質に局在を認めたが、杯細胞などその他の細胞には認めなかった。また、SLPIも一部の上皮細胞にその局在を認めた。しかし、凍結切片による蛍光抗体二重染色法によりSLPIとpIgRの両者の局在を示す上皮細胞は認めなかった。さらに、唾液腺ではpIgRは漿液性腺房細胞、半月、導管上皮細胞にその局在を認めたが、SLPIは一部の粘液性腺房細胞に局在を認めた。 これらの結果はSLPIとpIgRの発現が相補的であり、pIgRの発現がSLPIにより抑制されていることを示唆している。 HT-29細胞やCaCo2細胞をconfluentになるまで培養した後、培地にSLPIを0.1,1.0,10μg/mlの濃度になるように添加し、3日間培養した。培地に分泌されたpIgRの分泌量を検索した結果、0,1,1.0μg/mlでは分泌量の低下を示したが、10μg/mlではその値のバラツキが見られた。このことからHT-29細胞を1.0μg/mlのSLPIを添加した培地で10,20,30および60分間培養した後、核抽出物を抽出し、NF-κB, IκBβ, IκBαなどのシグナル伝達を検索した。 その結果、NF-κB, IκBβの発現がSLPI添加により低下することが明らかとなった。 現在、pIgRの発現を増加させるINF-γやTNF-αとSLPIの関与について検索を続けている。
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