研究概要 |
エナメル蛋白の主要物質アメロジェニンの系統発生学的性質を解明する目的で、爬虫類および両生類のアメロジェニン遺伝子のmRNAの塩基配列から一次構造を解読し、その部位特異抗体を作製して、免疫組織化学的に歯胚組織内における各ドメインの動態を観察することを目的とした。研究対象は爬虫類からイグアナ(Iguana iguana)、両生類からはイモリ(Triturus pyrrhogaster)を選択し、N末端、中央、およびC末端の各ドメインのアミノ酸配列8-12残基を抗原として特異抗体の作製を行った。結果として、合計6種類の抗体価の高い抗体を得て、これらを用い当該種と近縁種の歯胚組織における免疫反応の検出を行った。 実験の結果、各抗体はいずれもエナメル質基質およびエナメル芽細胞の分泌経路の細胞内小器官に強陽性に反応し、アメロジェニン蛋白の細胞内合成と分泌の過程を明らかにした。しかし、哺乳類で解明されているような各ドメインの組織内における局在変化は、今回の爬虫類や両生類では明瞭に観察されず、各反応はエナメル質基質内に均一に分布する傾向にあった。唯一、イモリのC末端特異抗体の反応はエナメル質基質の表層部位に集中する傾向にあり、この点においてはUchida, et. al.(1991)がブタのエナメル質基質で観察している所見に似ている。ウェスターンブロッティングによる解析は、各抗体に反応する21-22kDaの共通したバンドの検出はできたものの、それより低分子量のバンドの存在は証明できなかった。爬虫類および両生類のアメロジェニン蛋白は哺乳類に匹敵する性質を持っていると推察されるが、これを分解・修飾するメカニズムは哺乳類に比べまだ未発達なのかもしれない。
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