研究概要 |
平成18年度は両生類で明らかにされているような初期発生における組織分化誘導プログラムを、マウスES細胞培養系で再現できる無血清培養条件を検討した。まず、接着因子による分化誘導を検討した。これまでの申請者らの研究ならびに準備で、2次元培養系において分化を誘導するためには、適正な接着因子が必要であることを示唆する結果を得た.そこで、I型ならびにIV型コラーゲン、ゼラチン、ラミニン、ファイブロネクチン、ポリDリシン(PDL)をコートしたディッシュに、ES細胞を播種し、培養を4日間行い、未分化マーカーであるアルカリフォスファターゼ活性ならびに、未分化マーカーであるOct3/4,nanog,Sox2,原始外胚葉マーカー・FGF-5の遺伝子発現をreal-time PCRにて解析を行った。その結果、ラミニン、ファイブロネクチン上で培養を行うと、LIF存在下であっても、細胞は平坦に広がり、アルカリフォスファターゼ陽性コロニーは減少、さらに、原始外胚葉マーカーFGF5の遺伝子発現が上昇した。一方、I型ならびにIV型コラーゲン、ゼラチン、PDL上で培養を行うと、未分化性が保たれた。次に、LIFを除き、アクチビンやFGF-2などの増殖因子を添加したところ、I型ならびにIV型コラーゲン、ゼラチン、PDL上では、分化は起こらず、細胞はアポトーシスを起こして細胞死し、ラミニン、ファイブロネクチン上では、線維芽細胞様や神経細胞様に分化した。以上の結果から、マウスES細胞において、未分化性を維持するには、I型ならびにIV型コラーゲン、ゼラチン、PDL上で培養を行い、分化を促進させるには、ラミニン、ファイブロネクチン上で培養を行うことにより、in vitroでの分化を制御できることが明らかとなった。
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