カルシニューリンによるアポトーシス誘導メカニズム解明の途上で新規タンパク質(GenBank No.AK056303)を発見し、Monadと命名した。以後、われわれの研究はこの新規タンパク質Monadの研究とそれまでのカルシニューリンの研究の継続発展とに大別されたが、その双方についてこれまで得られた成果を概説する。 MonadはWD40リピートを2個持つ以外には既知のドメインやモチーフ構造を持たない。定量的RT-PCR法にて、ヒト組織中のMonadのmRNA分布を検討したところ、精巣を始め心、腎、膵、胎盤、脳などに広く分布していた。HEK293細胞にMonad遺伝子を過剰発現させた細胞に、TNF-αとシクロヘキシミドを作用させたところ、アポトーシスを起こした細胞数が約5倍に増加した。この細胞死誘導はカスパーゼの阻害薬で抑制された。また、Monad発現細胞ではTNF-α刺激濃度に依存して、前駆体のプロカスパーゼ-3が減少すること、カスパーゼ分解産物のPARPが増加することを確認している。以上より、Monadによる細胞死刺激時のアポトーシス促進機構は、カスパーゼ活性化を介した機序であることが示唆された。顎関節症などにおいて、その症状の増悪には、TNF-αなどの炎症性サイトカイン刺激による炎症反応が重要な役割を果たしている。このTNF-αが潜在的に持つアポトーシス誘導能を利用して炎症細胞にアポトーシスを起こすことができれば、結果的に炎症の抑制につながると考えられる。今後、Monadのアポトーシス誘導能を詳細に検討することにより、顎関節症などにおける過剰な炎症反応をコントロールし、難治性の本疾患の基本療法となる可能性を追求したい。また、顎関節症における破骨細胞活性化の重要性に注目し、マウス骨髄細胞からの破骨細胞分化の系を確立し、破骨細胞分化におけるカルシニューリンの関与について報告した(第79回日本薬理学会年会)。
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