研究概要 |
カルシニューリンは触媒サブユニットのカルシニューリンAと調節サブユニットのカルシニューリンBからなる。免疫抑制剤であるタクロリムスが、細胞死を抑制することが報告されているが、その作用機序としてはカルシニューリン活性(ホスファターゼ活性)の抑制によるとされてきた。カスパーゼ3はアポトーシスの最終段階で中心的な役割を果たしている。われわれはカスパーゼ3を調節する分子の探索を行い、カスパーゼ3を活性化するタンパク質としてラット大脳皮質よりカルシニューリンBを精製した。われわれはカルシニューリンAの制御因子として研究されてきたカルシニューリンBが単独でアポトーシスに関与するという全く新しい作用を見出した。 カルシニューリンBがカスパーゼ3の活性化を調節する機構の解明を目的として行われたこの研究はJournal of Biological Chemistryに発表された。この分野の基本文献としては、Wang, et. al. Science284,339-343(1999)があるが、彼らはカルシニューリン活性(ホスファターゼ活性)がアポトーシス誘導に重要との立場に立っている。われわれは彼らの実験結果の一部を確認しつつ、カルシニューリンがアポトーシスに重要ではあるが、その作用はホスファターゼ活性非依存性であるとの結果を得ており、この点がわれわれのオリジナルな点である。このシグナル伝達経路を詳細に検討することにより、顎関節症などにおける過剰な炎症反応をコントロールし、難治性の本疾患の基本療法となる可能性をさらに追求していきたい。
|