研究概要 |
ウイスター系ラットから摘出した脳,唾液腺,ヒト耳下腺由来HSY培養細胞,ラット副腎褐色細胞腫由来のPC12細胞からRNAsを得,RT-PCR法で唾液腺,培養細胞に発現しているNa/K-ATPaseαサブユニットアイソフォームのRNAsの発現について検討した。 ラット3大唾液腺に発現しているNa/K-ATPaseαアイソフォームのmRNAs発現を調べると,これまで神経組織にのみ発現していると考えられていたα3が舌下腺に検出された。舌下腺のα3は神経終末を消化,排除した遊離細胞でも検出されたことから,実質細胞に発現していると考えられた。これらのPCR産物の塩基配列はデータベースのα3と一致した。PCRで舌下腺のα3の発現量を定量すると,脳の数分の1であった。凍結切片を用いて舌下腺のα3蛋白質を免疫染色すると,漿液細胞と肥満細胞の膜に陽性であった。ヒト大腸では癌化によってα3が発現した症例報告があるが,HSY細胞ではα3は検出されなかった。一般に,α3は神経組織で多量発現しているが,PC12細胞をNGFで神経様に分化させても,α3の発現量は変化しなかった。 一方,ラット舌下腺のtRNAsを鋳型にしてα3に特異的なフォワードプライマーで逆転写反応後,PCRを行うと,期待されるPCR産物が得られ,その配列はα3と一致した。しかしながら,同様な方法で胸腺やリンパ節のInterleukin-9受容体のPCRを行うと,そのPCR産物は得られなかった。したがって,舌下腺にはNa/K-ATPaseα3のmRNAのみならず,そのアンチセンスRNAの存在も示唆された。また,特異的なフォワードプライマーによる逆転写反応はアンチセンスRNAを検出するために,有効かつ簡便な方法であることを明らかにできた。
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