研究概要 |
3大唾液腺に発現しているNa^+/K^+-ATPase αアイソフォ-ムをRT-PCRで調べると,α1およびα2は3大唾液腺すべてに検出され,α3は舌下腺にのみ検出された。3大唾液腺の各アイソフォームをウエスターンプロットで検出すると,mRNAの発現量に応じた蛋白質が検出された。また,舌下腺のa3を免疫染色すると漿液細胞と肥満細胞の膜に陽性であった。しかし,顎下腺では陰性であった。一般に,α2およびα3は脳,神経組織に存在すると考えられていたが,3大唾液腺で,舌下腺の肥満細胞にα3が強く発現していたことから,ヒスタミン分泌とα3との関係が興味深い。一方,ラット舌下腺のtRNAsを鋳型にしてα3に特異的なフォワードプライマーで逆転写反応後,PCRを行うと,期待されるPCR産物が得られ,その配列はα3と一致した。この結果から舌下腺にNa^+/K^+-ATPase α3のmRNAのみならず,そのアンチセンスRNAも存在することを明らかにすることができた。同時にantisense RNAsを簡便に検出する方法も確立できた。この方法で舌下腺のα3のアンチセンスRNAの発現量を比較すると,雄に比べ雌に顕著であった。Na^+/K^+-ATPase α3アイソフォーム蛋白質の発現をウエスターンプロットで分析すると,脳の場合,10週齢と60週齢とで同様な発現であったが,舌下腺では高週齢ラットに顕著であった。舌下腺のGAPDHのmRNA量は10および60週齢ラットで違いは認められなかったが,Na^+/K^+-ATPase α3アイソフォームのmRNAおよびアンチセンスRNA量は蛋白質と同様に高週齢ラットに顕著に発現していた。今後,加齢とantisense RNAsとの関係が興味深い。 以上の結果をArchs Oral Biolに投稿し、掲載の承諾を得た。
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