研究課題
歯周病などの炎症性疾患では、破骨細胞の増加による異常な骨の吸収が認められる。したがって、破骨細胞の分化を調節する因子を同定できれば将来新しい治療方法の開発に役立つことが着たいされる。我々は、DNAマイクロアレイを用いて破骨細胞の分化を調節する因子を探索し、IRF-8と呼ばれる転写因子が破骨細胞の分化を抑制する役割を担うことを明らかにした。IRF-8の欠損マウスでは、破骨細胞の増加に伴う重篤な骨粗霧症の発症が観察された。このマウスから調整した破骨細胞の前駆細胞は極めて高い破骨細胞への分化ポテンシャルを持っていた。逆に、IRF-8を細胞に強制的に発現させると、破骨細胞分化は完全に抑制された。また我々は、IRF-8が破骨細胞の分化に必須の転写因子NFATc1と複合体を形成し、NFATc1の転写促進機能やそれ自身の発現を抑制することを明らかにした。さらに、微生物の構成成分を感知するToll-like receptorの活性化によって破骨細胞の分化は抑制されるが、IRF-8欠損マウスの細胞を用いると抑制作用が著しく減弱した。これは、微生物感染による骨破壊にToll-like receptorが関与し、IRF-8が破骨細胞分化を抑制する機能を担っていることを示唆する。以上の結果は、IRF-8が骨の恒常性および炎症性疾患において、骨吸収を抑制する重要な転写因子であることを意味する。
すべて 2007
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