研究概要 |
本研究課題は、歯髄痛覚を裏付ける象牙質・歯髄感覚の感覚受容機序における象牙芽細胞の役割を明らかにする事を目的とした。本年度は、象牙芽細胞におけるTRPチャネルファミリー活性と電位依存性K^+チャネル(Kvチャネル)について解析を行った。1、象牙芽細胞にTRP(transient receptor potential)チャネルであるTRPV subfamily 1,2,3が発現していた。象牙芽細胞に、内因性TRPV1活性薬アナンダマイドを細胞外刺激すると、1-2分の遅延時間を持って細胞内Ca^<2+>濃度の増加がみられた。この増加は、細胞外無Ca^<2+>外液下では誘発されず、また、TRPV1抑制薬のキャプサゼピンで抑制された。しかしTRPV1外因性刺激薬キャプサイシンを細胞外から投与した場合には細胞内Ca^<2+>濃度の増加は見られなかった。これらの事は、TRPV1のリガンド結合部位が細胞内ドメインにあることを示していると考え、パッチクランプ法による細胞内環流を行ったところ、細胞内からのキャプサイシン刺激により内向き電流が記録された。したがって、象牙芽細胞が機能的なTRPV1を発現することで象牙芽細胞機能を維持していると考えた。2、象牙芽細胞の時間電位依存性K^+チャネルは、ピーク振幅に至る活性化時間が約30msで、不活性化過程における時定数は約400ms(いずれも膜電位=+50mV)を示し、緩徐活性化・不活性化を示すことが明らかとなった。これらの事から、象牙質・歯髄に加えられた熱・冷刺激が、象牙芽細胞に発現するTRPV1チャネルによって受容され、膜電位変動との機能協関を伴い、また細胞内Ca^<2+>を以前明らかにしたNa^+/Ca^<2+> exchanger (NCX) subtype3によって排出することで、感覚受容ならびに、刺激に伴う象牙質形成を行っていることが示された。
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