研究概要 |
破骨細胞が吸収窩内で溶解したCa^<2+>は40mM近くまで濃度が上昇し、ruffled borderを介して組織液中に放出される。今回、この破骨細胞におけるCa^<2+>輸送経路を明らかにするためにNa^+/Ca^<2+>交換輸送体(NCX)の関与について検討した。まず、RT-PCR法、ウエスタンブロット法、免疫染色法にてマウス破骨細胞に発現するNCXの発現を調べた結果、破骨細胞には3種類のNCX variant(NCX1.3,NCX1.41,NCX3.2)が発現しており、この内、NCX1.41は過去に報告のない新規のvariantであることが明らかとなった。次に、NCXの破骨細胞のCa^<2+>輸送機能への関与を検討するために、蛍光細胞内Ca^<2+>濃度測定や、whole cell patch clamp法によるNCX電流測定により、NCXを介したCa^<2+>輸送機能を調べた。その結果、各種NCX阻害剤や各NCXのsiRNAは、NCX電流やNCXのreverse mode(Ca^<2+>流入モード)介したCa^<2+>流入を抑制すると共に、最終的に破骨細胞の骨吸収を低下させることが分かった。また、NCX1ノックアウト(KO)マウスは胎生致死なので発現量が約50%のNCX1ヘテロマウス由来の破骨細胞と野生型を比較した。その結果、NCX1ヘテロマウス由来の破骨細胞ではNCXを介するCa^<2+>輸送機能及び骨吸収機能が部分的に抑制されていた。以上より、マウス破骨細胞には3種類のNa^+/Ca^<2+>交換輸送体(NCX)のvariant(NCX1.3,MCX1.41,NCX3.2)がCa^<2+>輸送経路として存在し、骨吸収に重要な機能分子であることが明らかとなった。また、破骨細胞のNCXは高Ca^<2+>濃度環境のruffled border膜においては、Ca^<2+>流入モードを介して遊離Ca^<2+>を細胞内に取込み、組織液中にCa^<2+>を輸送する重要な役割を果たしている可能性も示唆された。
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