研究概要 |
昨年度の報告書に記載したとおり、平成20年度に行った研究は、下歯槽神経血管束を描出するためのMRI画像の最適化に関する研究、および拡散テンソル画像の応用に関する研究であった。 前者については、昨年度までに、内耳の評価に利用されているCISS法をmodifyしたシークエンスを用いることよって神経血管束の高精細な画像が得られること、更にこれらを基に曲面MPR処理を行った画像を歯科インプラントの術前診断のために利用できる可能性が示唆されていたものの、画像ノイズの更なる低減が必要であった。今年度は、全く新しいシークエンスであるFISP法に着目して、撮像および画質評価を行った。FISP法は前述のCISS法と比較して解像度は若干劣る (ボクセルサイズはCISS法 : 0.45×0.45×1.0mm, FISP法 : 0.9×0.45×1.0mm)ものの、SN比に優れた画像の得られることが明らかとなった。解剖構造の“見やすさ"について3名の観察者が、両者の画像を比較した結果、解像度がやや劣るFISP法の方が有意に優れているという結果が得られた。 一方拡散テンソル画像の応用に関しては、SIEMENS社より提供していただいた試作の拡散テンソル撮像ソフトウェア (多軸拡散強調EPIシークエンス)と無償の画像処理ソフト (dTV; developed at the University of Tokyo)を使用して、下歯槽神経の画像化を開始した。当該研究機関に設置されているMRI撮像装置本体がすでに老朽化しているため、十分に満足できる結果は得られてはいないが、下歯槽神経の走行の一部を描出することができたと考えている。
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