研究概要 |
軟骨内骨化および骨の成長は種々の成長因子やホルモンにより維持・調節されていることが知られているが、その分子レベルでの調節機構は完全に明らかになったとは言えず、既知の因子のほかにも新たな調節因子が関与している可能性があり、未だ不明な点が多い。我々は以前、多分化能をもつマウス未分化間葉系細胞株C3H10T1/2を用いて、トランスウォーミング成長因子(TGF-beta)の添加によって発現が誘導される1,879塩基からなる新規遺伝子CORS26を単離した。CORS26遺伝子は246アミノ酸からなる分泌蛋白をコードし、我々はそれを、「軟骨から産生される分泌蛋白」という意味でカートデューシン(Cartducin)と名付けた。カートデューシンは軟骨前駆細胞および軟骨細胞の増殖を促進することにより、軟骨内骨化および骨の成長を調節する新たな成長因子である可能性を我々は最近明らかにした。 しかしながら、その骨形成促進作用機構の詳細については不明であった。そこで本研究において、最初にカートデューシンが血清中に存在しホルモンとして全身性に軟骨組織に作用している可能性を検討した。その結果、カートデューシンは血清中には存在せず、全身性ではなく局所性に軟骨組織に作用している可能性が考えられた。続いて軟骨内骨化の初期段階の軟骨前駆細胞におけるカートデューシンの細胞増殖促進に関わるシグナル伝達経路を解析した結果、カートデューシンの刺激は軟骨前駆細胞内のERK1/2キナーゼとPI3キナーゼを活性化させることが明らかになった。また、両シグナル伝達経路を遮断するとカートデューシン刺激による軟骨前駆細胞の増殖が抑制されたことから、ERK1/2キナーゼとPI3キナーゼを介するシグナル伝達経路がカートデューシンの骨形成促進作用に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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