軟骨内骨化および骨の成長は種々の成長因子やホルモンにより維持・調節されていることが知られているが、その分子レベルでの調節機構は完全に明らかになったとは言えず、未だ不明な点が多い。我々は以前、軟骨から分泌される新規蛋白を同定しカートデューシンと名付けた。最近我々はカートデューシンが軟骨前駆細胞および軟骨細胞の増殖を促進することにより、軟骨内骨化および骨の成長を調節する新たな成長因子である可能性を明らかにしたが、その骨形成促進作用機構の詳細については不明であった。そこで平成18年度の研究で、カートデューシンが血清中に存在しホルモンとして全身性に軟骨組織に作用している可能性を検討した。その結果、カートデューシンは血清中には存在せず、全身性ではなく局所性に軟骨組織に作用している可能性が考えられた。さらに軟骨内骨化の初期段階の軟骨前駆細胞におけるカートデューシンの細胞増殖促進に関わるシグナル伝達経路を解析した結果、ERK1/2キナーゼとPI3キナーゼを介するシグナル伝達経路がカートデューシンの骨形成促進作用に重要な役割を果たしていることが明らかになった。続いて平成19年度の研究では、カートデューシン遺伝子が軟骨の無血管領域である増殖層に発現していることに着目し、血管内皮細胞に対する血管新生抑制効果が存在するのではないかという仮説をたてて検討した。その結果、カートデューシンには仮説とは逆にMAPキナーゼ経路を介して血管内皮細胞の増殖および遊走を促進する新たな作用があることが明らかになり、軟骨内骨化の最終段階における血管侵入に関与している可能性が示唆された。以上のように、我々が発見した新規蛋白カートデューシンが成長板軟骨の増殖軟骨や軟骨前駆細胞から分泌され、増殖因子および血管新生因子として内軟骨性骨化における骨格の形成・成長を調節していることが本研究課題で明らかになった。
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