研究課題
基盤研究(C)
【目的】近年、疫学的な調査から歯周病が心疾患のリスクファクターであることが指摘されるようになり、特に血管壁に対する為害作用が注目されている。歯周病原因細菌であるPorphyromonas gingivalisの産生するGingipainの病因作用の一つに、カドヘリンなどの細胞接着因子を分解し、歯肉細胞や血管内皮細胞などの足場依存性細胞の付着喪失による特異的な細胞死(アノイキス)を導くことがある。我々は骨吸収抑制因子Osteoprotegerin(OPG)がこれらアノイキスを抑制することを見いだした。この研究の目的はOPGにおける血管内皮細胞のアノイキス抑制の機序を明らかにすることである。【方法】OPGを20ng/ml、100ng/mlおよび500ng/mlの濃度で添加した無血清培地(H-SFM)にてヒト微小血管内皮細胞(HMVEC)を36時間培養し、細胞の増殖をtetrazolium(WST-8)reduction assayにて測定した。さらに、血管新生に重要な役割を果たすインテグリンavβ3とαvβ5を特異的抗体で処理し、OPGを500ng/mlの濃度で添加したのち細胞の増殖と伸展を観察した。【結果および考察】OPGを添加した細胞群は、非添加群に比較してOPG濃度依存的に細胞の増殖が認められた。さらにavβ3およびαvβ5の抗体をそれぞれ単独で処理した場合、細胞の増殖の抑制は認められなかった。しかしavβ3とavβ5の両抗体を同時に処理した場合、OPGによる細胞の増殖が抗体により有意に抑制された。【結論】これらの結果より、OPGの血管内皮への作用にはavβ3とavβ5の両方が関与していることが示された。これらのインテグリンは血管内皮細胞の抗アポトーシス作用に重要な役割をはたすことから、OPGがこれらインテグリンの発現増加を介してアノイキスを抑制している可能性が示唆された。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 1件)
FEMS Microbiology Letters 264
ページ: 238-245
Osteoprotegerin protects endothelial cells against apoptotic cell death induced by Porphyromonas gingivalis cysteine proteinases, FEMS Microbiology Letters 264