筆者らは11C-Cholineの有用性を18F-FDG(FDG)と比較し、トレーサーとしてのCholineの有用性を明らかにしてきた。しかしながら、11Cで標識したトレーサーはその半減期が短いため製造メーカーによる供給には向かない。本研究課題では、半減期が長い18FでCholineを標識する18F-Cholineの安定的合成法を開発し、18F-Cholineの基礎と臨床面からその特性を明らかにすることを目的とした。 1.培養癌細胞に対する18F-FDG、 18F-Choline集積の細胞周期依存性 同調癌細胞に対し、18F-Cholineの投与実験を行ったところ、各同調ステージにおける取り込み量のSD(標準偏差)が大きかったため、条件を変えながら数多くの実験を行った。その結果、18F-FDGはS期(DNA合成期)初期に、18F-CholineはG2/M期(分裂前期・分裂期)に最大集積を示し、一方ではG1期の集積は最低であることが示された。このことから両者とも、その集積には細胞周期依存性があり、細胞分裂頻度の高い癌ほど高集積を示すことが予測された。 2.18F-FDGと18F-Cholineを用いた口腔癌のPET診断 マウスを用いた18F-Cholineの毒性試験を経て、18F-Cholineの患者への投与に関する倫理委員会での承認を得た。昨年9月より、18F-Cholineを用いたPETを行い、口腔癌に対し良好な集積を示すことが判明したが、症例数が5例と少なく、18F-Cholineの有用性について十分な検討ができなかった。
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