研究概要 |
本研究は我々とドイツの研究協力者Dr.Cornelia Kober, Professor, Ph.D.による共同研究の一環である。CT及びMRによる三次元データを得て、「組織を正確に抽出し領域分けするというセグメンテーション」と「特に下顎骨に対する力学的特性を解析する有限要素法モデリング」である。そこで、CT画像だけでなくMR画像に基づいた有限要素モデリングを顎関節部の構造を重視して行うものである。3年間で申請した研究の1年目である。 Dr.C.Koberがこれまでに、下顎骨のモデリングに加え、顎関節部の関節円板、結合組織、外側靭帯を「顎関節のカプセル」に単純化して、シミュレーションのための解剖構造の再構築を行った。そして下顎骨の構造力学的な振る舞いに対する「カプセル」の力学的材質特性の影響を最適化有限要素法で検討すると、カプセルの材質係数が下顎骨の構造力学的な振る舞いを質的に有意に変化させることがわかった。そこで今回、X線CTとMR画像を利用した3次元画像によって個体別シミュレーションを行い、生理的な変化を説明・予測するため、このバイオメカニカルな手法の適用を検討した。つまり構造の単純化から脱して顎関節部構造の力学的な性質を詳細にシミュレートする。高精細なMR画像で関節円板や外側靭帯の再構築をモデリングして行った。また歯科用コーンビームCT画像については、広島大学医歯薬研究科の谷本啓二教授と一緒に検討を始めた。 今年は三次元画像処理・ビジュアリゼーションソフトウエア「Amira Version4(Mercuray Computer Systems, Inc.,Germany)」を購入した。有限要素法による解析は、"Numerical Analysis and Modeling-KASKADE3.1"を使用するが、国内で入手できないのでDr.Cornelia Koberにモデリング・シミュレーションの解析を依頼した。 また、顎関節症の病態解明で業績のある共同研究者の佐野、音成(旧姓、山本)によって、このシミュレーション研究が顎関節症患者の生理的状態の病態診断や予後の予測に役立つかどうか検証している。 なお、平成19年3月8日から17日まで、本補助金による海外出張を行なった。最初に、オーストリア・ウイーンにてEuropean Congress of Radiology年次総会(ECR2007)に参加し研究情報を収集した後、FachhochschuleOsnabrueck-University of Applied Sciences(オスナブルク工科大学)を訪問し、Dr.Cornelia Koberと「3次元イメージングとバイオメカニクス研究への発展」について議論を行なった。またDr.Koberの計らいで名門ミュンスター大学Westfalische Wilhelms-Universitat Munsterで研究内容に関するプレゼンテーションを行なった。またハノーバーでCeBITというエレクトロニクスの総合展示会を見た。Dr.Cornelia Koberは、その"Public section"で、我々との共同研究を含めた展示を行なった。
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