研究課題
閉経後骨粗鬆症の患者でも、骨折する人としない人がいる。日常的な運動の程度によって骨密度あるいは骨強度が異なるという臨床研究の結果はあるが、運動/不動のレベルと骨強度の関係はあきらかでない。歩行程度のマイルドな運動が骨強度の維持に重要であるとの推論のもとに、卵巣摘出(OVX)術を施したラットを狭窄したケージ内で3ケ月間飼育することにより閉経後の骨のアンダーユースのモデルとし、1)本モデルが適切であること、2)下肢骨が如何なる変化をうけるかを検証した。コントロール歩行群と比較して、腰椎および長管骨骨端部の海綿骨骨密度BMDはOVX群(エストロゲン欠乏)で減少が大きく、歩行制限での減少はあまりなかった。一方、骨幹部の皮質骨BMDにはOVX群で減少は見られず、歩行制限によって大きな構造の変化が見られ、皮質骨断面積の狭小化および骨強度指標SSIの低下が計算上で認められた。実測してみると、歩行制限のみによる強度の有意な低下が確認されたが、そればかりでなく、歩行制限によって剛性が増加していた。そこで皮質骨の顕微Raman分光測定を行ったところ、歩行制限のみで有意にマトリックス(Amide I)のミネラルに対する比率の減少とヒドロキシプロリンのプロリンに対する比率の相対的な減少・コラーゲン架橋の減少(傾向)がみられた。従って、歩行制限を行うと骨基質タンパクの減少及び成熟不全が起こり、構造が変化して骨が脆弱化すると考えられた。組織学的検討からは、歩行制限で骨細砲が死んで空になった骨小腔の単位面積当りの数が増加し、スクレロスチン(SOST遺伝子産物で、骨形成を阻害)陽性の骨細胞の数が増加、骨細管のネットワークが不規則になっていることが認められた。骨形成速度BFRは皮質骨内周で増加していたが皮質骨BMDとの関連性は認められなかった。よって、歩行制限(運動不足)を受けた下肢骨では、骨細胞が力学的負荷の減免を感受してスクレロスチンを産生し、リモデリングの異常を惹起し、骨質の劣化をもたらしたことが示唆された。
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