研究概要 |
今年度は主に以下の項目について行った。 1)臨床的スミア層の超微細構造に関する研究 ヒト抜去歯の歯冠部中央象牙質を、2種のダイヤモンドバー(レギュラー・スーパーファイングリット)および#600耐水研磨紙を用いて可及的に平坦な象牙質面を得た後、脱灰・固定・脱水・エポキシ樹脂包埋した試料を90nm程度の厚みに薄切した後、TEMにて観察した。その結果、スミア層の厚みは10μm前後で、使用器具による大きな違いは認められなかったため、臨床的スミア層を分類するには至らなかった。 2)接着性能に関する研究 3種の国産1ステップ接着システム(Clearfil S^3Bond(Kuraray)、G-Bond(GC)、Absolute(Dentsply-Sankin)の長期接着安定性を、100,000回サーマルサイクリング(TC)試験前後の微小引張り接着強さおよび象牙質接着界面の超微細構造(TEM)を指標に比較検討した。その結果、今回使用したすべての接着システムで、TC負荷前後での著明な形態学的変化は認められなかったものの、引張り接着強さがいずれも減少したことから、接着界面に何らかの劣化が起こっていることが示唆された。 さらに、現在、3種の簡略化ステップ接着材である、AQBond(Sun Medical)、One-up Bond F(Tokuyama)、MegaBond FA(Kuraray)を用い、4℃と55℃のサーマルサイクリング試験を100,000回行っている途中である。100,000回行うには半年間必要であるので、平成19年8月頃に接着強さ測定ならびに接着界面のTEM観察を行う予定である。
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