う蝕象牙質は細菌感染している外層と細菌感染していない内層とに分けることができる。う蝕象牙質を保存し、再生・再利用し、修復を行なう可能性を調査した。まず細菌感染しているう蝕象牙質外層を耐水研磨紙#600、スチールバー、レーザーのいずれかの方法により除去し、次に保存した内層に接着修復を行なった。修復材として、セルフエッチングプライマー接着材ならびにリン酸エッチングによるウエットボンド接着材を選択し、それぞれのう蝕象牙質内層に対する接着強さを測定し、比較した。結果、う蝕象牙質内層に対する接着強さは、スチールバーを用いて外層を除去した場合、耐水研磨紙による切削よりも有意に低下し、スチールバーにて外層を除去した場合はリン酸エッチングを行なったほうが高い値を得ることができた。レーザーを用いた場合、スチールバーによる切削よりも接着強さは向上し、セルフエッチングプライマー接着材とウエットボンド接着材との間に有意差は認められなかった。 次に、セルフエッチングプライマー接着材、ウエットボンド接着材をもちいて象牙質に接着修復を行った場合の超微小接着界面構造を、FE-SEM/EDSを用いて調査した。象牙質に各種接着材を塗布し、レジン修復を行ない、硝酸銀水溶液に浸漬した。その後、EF-SEM/EDS観察を行い、微小欠陥(ナノリーケージ)に進入したAgを検出し、評価した。結果、各製品により界面構造は異なり、セルフエッチングプライマー接着材において微小欠陥の少ない構造を示すものが認められた。 現在、引き続きう蝕象牙質のプロテオーム解析と構造の解析を行なっている。
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