研究概要 |
近年開発の進んでいる1ステップ接着材の象牙質に対する接着性を評価した結果、従来の2ステップ接着材よりも低く、う蝕象牙質に対する接着性はさらに低くなることが危惧された。 次に、コンポジットレジンの接着性と封鎖性を調査するため、接着界面における超微小欠陥の存在(ナノリーケージ)に注目し、その発生状況の詳細な評価を試みた。Agをトレーサーとして調査した結果、健全象牙質においてもナノリーケージの存在することが判明し、またその程度は接着材の種類や象牙質の部位により異なっており、特に深い部位では、その抑制が求められることが理解された。 また、う蝕象牙質におけるプロテアーゼの分布を、未脱灰の超薄切切片を作成し、金コロイド法による免疫染色を行い、電子顕微鏡により観察した。蝕象牙質の細菌感染部と非感染部、ならびに健全象牙質における各種MMPの局在性を金コロイドの数値により半定量的に測定した結果、う蝕象牙質にはコラゲナーゼ(MMP2,8)やゼラチナーゼ(MMP9)など、病変部の拡大に関与する酵素が含まれており、特に細菌感染部のう蝕象牙質ではMMP8,9など、唾液に含まれる酵素が侵入していることが明らかとなった。また、細菌感染していないう蝕象牙質の内層において、MM8,9は低下しており、細菌感染している外層との違いが判明した。 う蝕象牙質を再石灰化させる修復材料として、アパタイトを形成するリン酸カルシウムセメントに着目し、その操作性を向上させるため、2ペーストタイプのセメントの開発に着手し、臨床応用への可能性を模索した。機械的強度はまだ十分とはいえないが、修復材料として期待の持てる結果を得ることができた。
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