研究概要 |
本研究では,酸や機能性モノマーの分子構造とアパタイト表面における化学的相互作用との関連性について分子レベルで解析することを目的とする。本年度は,歯科治療で用いられている機能性モノマーの内,4-METと10-MDPについて,アパタイト表面に対しどのように作用するかを検討した。 1)X線光電子分光法(XPS) 機能性モノマーとして4-METならびに10-MDPを用いた。アパタイトプレートと各種モノマーをエタノールと水の混溶媒で反応させ,その後,超音波洗浄した試料を作製し,XPSにより機能性モノマーとアパタイトとの結合状態を化学的に分析した。その結果,4-METにおいては,アパタイトに吸着した4-METのカルボキシル基が未反応の4-METに比べて低エネルギー側に化学シフトしており,これより,4-METはアパタイトに対して化学的に結合することが示唆された。また,10-MDPに関しては,分子内のリン酸基とアパタイト中のリン酸との判別がつかないため,今後,理論的解析を含めた詳細な分析が必要であることが明らかとなった。 2)固体核磁気共鳴(^<31>P MAS NMR)およびX線回折(XRD) 機能性モノマーとして10-MDPを用いた。アパタイト粉末と各種モノマーをエタノールと水の混溶媒で反応させたものとエタノールのみの溶媒で反応させた試料をそれぞれ作製し,出来た試料を粉末XRDにより試料の結晶相の同定を,固体NMRにより試料の分子構造の解析を行った。その結果,10-MDPは反応初期でアパタイトに吸着し,10-MDPのカルシウム塩を形成することが明らかとなった。またその構造は10-MDP分子が2分子向かい合った層状構造をとることが示唆された。そして反応の経過に伴い,溶液中に溶け出したカルシウムイオンおよびリン酸イオンが酸性環境下でDCPDの構造で析出することが明らかとなった。
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