研究概要 |
本研究では、LL37が歯髄の炎症の抑制および歯髄細胞機能の活性化に関わるかを明らかにするために、培養ヒト歯髄細胞(HP cells)の炎症性サイトカイン発現およびmigrationに及ぼすLL37の影響を調べた。 (1)炎症性サイトカイン発現:1.HP cellsはP2X_7レセプターを発現していた。2.LL37とBz-ATP(P2X_7レセプターアゴニズト)はペプチドグリカンによるIL-6とIL-8のmRNA発現促進を抑制した。3.LL37はALPaseとオステオネクチンの遺伝子発現に影響を及ぼさなかった。このようにLL37によるサイトカイン発現抑制作用はP2X_7レセプターを介していることが示唆された。 (2)migration:LL37によるHP cellsのmigrationにはP2X_7レセプターではなく、EGFレセプターのtransactivationとMAPキナーゼであるJNKの活性化が関与している可能性を示唆した。 可逆性歯髄炎に対して修復象牙質形成を促進するためには、炎症の抑制、細菌感染のコントロールおよび宿主細胞の活性化が必要である。本研究の結果は、LL37が炎症抑制効果と歯髄細胞の活性化能を有することを示唆した。LL37はう蝕関連細菌に対して抗菌活性を有する(Ouhara, et. al.,2005)。このように、LL37は炎症の抑制、歯髄細胞の活性化および細菌感染のコントロールを担える可能性があることから、歯髄炎に有効な新しい治療薬に成り得ることが示唆された。
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