研究課題
難治性根尖性歯周炎と診断された歯牙の根管内細菌叢について遺伝子レベルで解析する事を目的として、数種の細菌及び真菌に特異的な遺伝子配列を有するprimer pairを用いてPCRを行い、遺伝子レベルで病原体の検出を行った。サシプルとしては、臨床的に難治性根尖性歯周炎と診断された歯牙の根管内に貼薬された綿栓や根管拡大に用いたファイルに付着した切削片を用いた。治療毎にこれらのサンプルを回収して、同一根管内の治療経過による菌叢の変化を解析すると共に、検出された細菌種と臨床的根管内所見(腐敗臭や浸出液の有無等)との関連性を調べた。その結果、比較的大きな根尖病巣を有し難治性根尖性歯周炎と考えられる根管内から高頻度(62.5%)でFusobacterium nucleatumが検出された。さらに、培養が困難とされているTreponema denticolaやTannerella forsythesis、Porphyromonas gingivalisも検出された。また根管拡大時の切削片が白色を呈し、十分に根管拡大を行った後では、16SrRNAを用いたPCRの結果より、遺伝子増幅バンドのintensityは顕著に減弱しており、明らかに細菌数が減少している事が示され、これと一致してF.nucleatumを含む上述した細菌種は検出されなかった。しかし、このように十分に根管拡大を行ったにもかかわらず、臨床症状が消失しない根管では、根管内顕微鏡観察やEndodontic surgery時に根管あるいは根尖部の破折が認められた。この事は、何らかの原因により根尖部の硬組織が破壊され、その破壊された局所へ細菌が侵入・棲息・増殖した結果、慢性の難治性根尖性歯周炎の病態が形成される事も示唆された。
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