研究概要 |
これまでに私達は,歯髄創傷治癒・再生過程を解明するため,歯髄アポトーシスと象牙質・歯髄複合体の修復・再生に関わる細胞増殖・分化の関係をin vivo実験系で明らかにしてきた(J. Dent. Res., 2001;J. Dent. Res., 2003).また齲蝕等の感染後に窩洞形成によって傷害を受ける臨床条件を想定し,窩洞形成時の主要要素であるヒート・ストレスに曝露された歯髄細胞にはアポトーシスが誘導されるが一部の細胞は熱抵抗性を有すること(J. Cell Biochem.,2005),細菌由来LPS刺激はHSF1,Aktを修飾することで,ヒート・ストレス早期のHSF1,Akt活性化を誘導し,活性化したHSP27とともに短時間のヒート・ストレスに対する歯髄細胞の熱抵抗性を増強する可能性を示すこと,(J. Cell. Biochem,2006),低酸素環境下において培養歯髄細胞にアポトーシスと細胞周期停止が誘導されること(J.Dent.Res.,2006)をin vitro実験系で明らかにしてきた.今回,象牙質/歯髄複合体の再生療法確立を目的とした研究において,露髄後象牙質/歯髄複合体欠損部に移植したゼラチンハイドロゲル粒子から徐放されるfibroblast growth factor-2(FGF-2)は,修復象牙質とは異なる新生象牙質形成を象牙質欠損部に誘導すること(J. Endod. 2007)を明らかにした.さらに,ラット切歯歯髄から,象牙質形成能(石灰化能)を有する歯髄細胞株を樹立した(J.Endod.2007).現在,各種グリコサミノグリカンおよび増殖因子が歯髄組織を構成する歯髄細胞,象牙芽細胞,および神経細胞への影響を検討しており,in vitro実験系ではグリコサミノグリカンの1つであるヒアルロン酸が歯髄細胞増殖や神経細胞分化に影響を与えることが明らかになりつつある.
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