研究概要 |
本年度は,まず顎堤形態の総合的評価に必要な荷重条件について再検討した.前年度検討した両側荷重と義歯の前後的中央への片側荷重に加え,片側荷重の荷重点の位置を前後的に変更した際の義歯の変位を含めて主成分分析を行うと,全データの分散の80%以上を説明するためには,7主成分(以下PC-Dとする)が必要となった.一方,顎堤形態について近遠心・頬舌的に格子状に規則的に分割した際の格子上の点の座標値を用いて主成分分析を行ったところ,顎堤形態の分散の80%以上を,7主成分(以下PC-Mとする)で説明できた.また,PC-Mの主成分得点を従属変数,顎堤上の代表点13点の各座標値を独立変数として重回帰分析を行い,これらの代表点の計測でP各PC-Mの50〜90%を説明できると考えられた.従って,顎堤の形態的特徴はこの代表点の計測によりほぼ把握できると考えられた. 次に,クラスター分析によるグループ分けを試みたが,PC-D,PC-Mのいずれを用いても,明確なカテゴリー化は困難であった.そこで,PC-Dの主成分得点のうち一つを従属変数に,PC-Mの主成分得点を独立変数としてステップワイズ法による重回帰分析を行った.しかし,R2乗値は最大で0.7程度にとどまったうえ,有意な説明変数がほとんど選択されないPC-Mもあり,PC-Dを推測できるような顎堤形態の診断を行うにはPC-Mの評価のみでは不十分と考えられた.この原因として,解析された義歯の動揺にたいする人工歯の頬舌的排列位置の影響が考えられ,義歯の動揺に基づく顎堤形態の診断を行うためには,人工歯の位置も評価に加えるか,デンチャースペース全体の形状として評価することが必要であると考えられた.一方,PC-Mが,PC-Dを説明する変数として有意となる頻度から,顎堤の形態的要素のうち義歯動揺にたいする影響の大きな要素が明らかとなった.
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