研究概要 |
グラスアイオノマーセメント(以後,GIC)は,フッ素徐放性,組織親和性,歯質接着性などの優れた特長を有しているが、コンポジットレジンやアマルガムと比較すると物性面で劣る.一般的にセメントは,粉液比を増すとある程度物性は向上するが,操作性は劣る.操作性を損なわず粉液比を増す策としてシリカの球状フィラー添加を検討,本年度は,球状フィラー添加の効果がGICの物性に及ぼす影響を検討し,下記の成果を得た. 1.粉液比:GICは,球状フィラー添加により,セメントの操作性が向上した.両者のセメント面積が一致したところを粉液比(P/L)とした.⇒球状フィラー添加型:P/L=2.2,従来型:P/L=1.9 2.曲げ強さ,曲げ弾性率および吸水率: (1)球状フィラーを添加することにより,従来型GICと比較して有意に改善された(p<0.05). (2)球状フィラー添加型GICは,同粉液比の従来型GICと比較しても有意に改善された. (3)従来型GICにおいては,粉液比を2.2に増加しても粉液比:1.9と比較して稠度は低下するが,物性面では有意な影響を示さなかった. 3.エナメル質および象牙質に対する接着強さ: (1)球状フィラーを添加することにより,従来型GICと比較して有意に改善された(p<0.05). (2)球状フィラー添加型GICは,同粉液比の従来型GICと比較しても象牙質に対する接着強さで有意に改善された. (3)従来型GICにおいては,粉液比を2.2に増加しても粉液比:1.9と比較して稠度は低下するが,接着強さでは有意な影響をなかった. しかし,今回は球状フィラーを10 wt%添加しただけだったため,このような好結果が確認されたとも考えられる.シリカフィラーは表面処理してなく形状は球状のため,添加量,粒径および形態による影響が次年度の課題である.
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