研究概要 |
ウ蝕予防の進歩や歯質修復材料の進歩に伴いFDIによりMinimal Interventionという概念が提唱された.われわれは,この概念に沿った修復材としてグラスアイオノマーセメントが,最適であると思っている.その理由として,1)処理材を併用しなくてもエナメル質,象牙質および軽度のウ蝕象牙質に対する良好な接着性,2)長期のフッ素徐放性,3)歯髄に対して安全な点,4)歯質に最も類似の熱膨張係数等が考えられる.しかし,コンポジットレジンと比較すると物性や歯質接着強さでは劣る.また,現有のグラスアイオノマーセメントのフッ素徐放量では満足な臨床結果が得られてない.そこで,コンポジットレジンに少しでも近づけるべく,物性の改善や歯質接着強さの向上を目指して,研究代表者の発案でナノテクノロジーを導入した粒径0.2〜0.5μmの球状シリカフィラーの配合を考えた.その結果,削片状フィラーと比較してこの球状シリカを配合すれば同じ操作性ながらセメント泥の流動性が増すため粉液比は増す.その結果として,従来のグラスアイオノマーセメントと比較して操作性が向上するため高粉液比が可能となり,その結果,物性や,グラスアイオノマーセメントの場合接着試験後の破断面が凝集破壊するため物性が向上すれば必然的に歯質接着強さは向上する. そこで,われわれはナノテクノロジーを導入した粒径0,2〜0,5μmの球状シリカフィラーの配合により物性,歯質接着性および抗ウ蝕性に優れたグラスアイオノマーセメントの開発を計画,平成18年度から着手,平成19年度で大筋の成果を得ることができ,Dental Materials Journalにその成果を発表した.そのため,平成20年度ではこの考えを合着用に応用,その結果,次の成果が得られた.1)被膜厚さ:P/L=2.4および2.6の時,フィラー7.5および10.0wt%添加の系では20μm以下の被膜厚さを示し,P/L=2.0および2.2と比較して有意差がなかった.そしてコントロール(Fuji Lute,P/L=2.0,練和開始1.0分後荷重)と比較しても有意な差がなかった.この結果から,被膜厚さを損なわず,粉液比を向上させることが示された,2)圧縮強さ:4種の粉液比で球状フィラー添加の影響は統計的にみられなかった.P/L=2.6の場合,P/L=2.0および2.2と比較していづれのフィラー添加量においても有意に向上した.フィラー添加に関わらず,粉液比の増加に伴い圧縮強さは統計的に向上した.
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