研究概要 |
睡眠時ブラキシズム(Brux)の病態メカニズムや原因は未だ解明されていない.この原因として,Brux患者の診断方法が存在しなかったことが挙げられる.近年,簡便に咀嚼筋活動の累積記録が可能な貼付型の一体型筋電計(BiteStrip[○!R])が開発され,Bruxの客観的な把握が可能となった. 一方,Bruxには日差変動が存在するが,それを考慮した診断方法は確立していない.そこでBrux患者の特異性を検討する前段階として,各種診断方法がどの程度その患者のBrux頻度を表現できるかを検討した. 対象は2007年2月から4月までに岡山大学病院補綴科(クラウンブリッジ)の顎関節症,口腔顔面痛み外来に受診した15名(男性/女性:2名/13名,平均年齢40.7+/-22.1歳)の連続患者サンプルのうち,核磁気共鳴画像診査ならびに臨床診査より顎関節内障患者(ID)ならびに咀嚼筋痛患者(MFP)と診断されたものとした.これら被検者に,10日間連続してBiteStripを自宅にて使用させ,各被験者毎のBrux頻度を最頻値ならびに中央値とした.各種診断方法は,任意の1日の結果,連続2日間,および連続3日間の結果を抽出し,任意の1日はそのスコアを,連続2日間の結果は,それらの連続検査,並行検査,より高いスコアの3種類の方法にて代表値を算出した.また,連続3日間の結果は,最頻値,中央値,最高値とした.これらの値にブラキサーの診断基準を適用し,10日間の代表値と比較した場合の各種診断方法の感度,特異度,正診率を算出した.なお,本研究は岡山大学疫学倫理委員会の承認を得て施行した(#69). 観察期間中,1名の患者が研究への参加を拒否したため8名(女性:平均年齢41.5+/-20.7歳,ID群6名,MFP群2名)が最終サンプルとなった.10日間の最頻値を代表値とした場合,1日の検査でも感度:0.80-0.90,特異度:0.80-0.86,正診率:0.81-0.88と高い値を示した.また,他の検査法では測定日数の増加に伴い正診率は上昇した.一方,中央値を用いた場合も1日の検査では感度:0.87-0.90,特異度:0.74-0.80,正診率:0.82-0.88であり,連続検査を除く他の検査法では測定日数を増やすと正診率は上昇した.
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