研究概要 |
「ブラキシズムに起因する力を歯周組織が破壊されることで代償した場合には咬合性外傷が生じ,歯質の部分で代償した場合には咬耗が生じ,それらの代償が上手く行かなかった場合には顎関節症や顎顔面疼痛が生じ,また力の分散が上手く行ったケースでは無症状に経過する」という仮説を立てた。本研究の目的はこの仮説を証明することである. ボランティアを被験者として募り,各顎口腔疾病の危険因子(アンケートによる生活習慣,精神的ストレス状態,全身症状,顎関節症状等の記録などを行うものである.更に一年ごとにリコールを行い,各データを採取後に統計処理を行った. 平成18年度に本学の疫学研究倫理審査委員会に承認された研究計画にしたがい,平成20年度に調査を行えた36名の被験者のうち,平成21年度に再調査できた被験者は24名(ドロップアウト12名)であった.平成19,20年度に調査を行った被験者群20名との両世代の被験者を合計すると1,2年目の調査が行えた被験者は44名(男性19名,女性25名)であり,これら44名のデータ分析を平成21年度に行った. その結果,1年目,2年目の調査を通してブラキシズムは女性被験者の方が男性被験者よりも多いことが認められた.また精神的ストレスや口腔内の歯牙,歯周状態には,経時的変化は認められなかった.ただし,女性被験者に限り,調査2年目に顎関節疼痛の増加が認められた.これは歯,歯周組織が健康な状態の場合,ブラキシズムは直接に顎関節に影響を及ぼすことを示唆するものと考えられる. 選択した被験者がいずれも学生であることから,口腔内の歯,歯周組織が健全な状態の者が大多数であり,ブラキシズムとこれ等の因子との関連が十分には検証できなかったと考えられる.被験者の拡大と調査期間の延長による更なる検討が今後の課題となる.
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