研究概要 |
近年,我々は,ヘパリン結合部位を改変・修飾することで局所停滞性を高め,骨誘導能を改善した遺伝子改変骨形成因子(BMP-2 T4 mutant)を,大腸菌発現系で生産することに成功した。このBMP-2 T4 mutantは,それ自体で組織停滞性がよいため,従来の野生型BMP-2に最適化されたキャリアと同等の徐放プロファイルを持たせることが,よい骨再生能を生むかどうか不明であった。そこで我々は,このBMP-2 T4 mutantに最適化した徐放プロファイルをin vitroの系で求めるとともに,in vivoでその有効性を検証した。まず、in vitroにおいて等イオン点を調整した7種類のゼラチンハイドロゲルに対して^<125>Iラベル化したBMP-2 T4 mutantを含浸させ,収脱着挙動を検討した。次にin vitroの結果を踏まえ、カチオン化ゼラチン並びに塩基性ゼラチンに^<125>Iラベル化したBMP-2 T4 mutantを含浸させ,マウス皮下にて徐放動態を分析した。最適化されたゼラチンハイドロゲルの同所性骨再性能を検討するために,ラット頭蓋骨骨欠損モデルに移植し、軟エックス線並びに組織学的検討を加えた。In vitro, in vivoの徐放試験については等イオン点が高いゼラチンハイドロゲルほど,高い収着挙動および徐放動態を示した。しかしながらラット頭蓋骨骨欠損モデルにおいては,カチオン化ゼラチンではほとんど骨再生は認めらなかったが、塩基性ゼラチンを用いた群では強い骨再生が認められた。以上から,BMP-2 T4 mutantは,塩基性ゼラチンと共に用いることで,確実な骨再生を安定的に実現できることがわかった。現在は大動物のインプラント周囲骨欠損モデルにおいて塩基性ゼラチンとBMP-2 T4 mutantのコンビネーションの有効性を検証中である。
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