本年度は骨へ分化しうる細胞を、最も侵襲の少ない方法で口腔内から採取する方法を検討するため、歯肉、骨膜、歯髄、骨の4種類の組織から細胞を採取し、以下の通りの実験を実施した。 (1)各種組織からの効率的な細胞採取法の検討 ラットの口腔内口蓋部位から歯肉、下顎骨から骨膜、犬歯相当の歯牙から歯髄、そして下顎骨骨体部から骨組織を採取し、ディスパーゼ、コラゲナーゼによる酵素分散後に接着して増殖させる方法および、分散できずに残った組織から細胞を増殖させる2種類の方法で細胞を得た(骨はコラゲナーゼによるoutgrowth法のみ)。その結果、翌日の段階では骨:骨片からのoutgrowthはほとんどなかった。骨膜:spindleな細胞が散見され、残った組織からはoutgrowth細胞は認められなかった。歯髄:多くのコロニー状細胞が見られ、血球様の小さい細胞も多かった。残った組織からもコロニー状にみられるが、上皮様のコロニーも多かった。歯肉:コロニー状にもspindleにも細胞が有り、上皮様の集団もあった。残った組織からもコロニー状に細胞がみられるが、上皮様のコロニーも多かった。 (2)各種組織由来細胞の増殖と骨、脂肪分化試験 上記方法にて採取された細胞集団のうち、最も短期間に多くの細胞が得られた組織は骨膜と歯肉であった。脂肪分化能は骨膜>歯肉=歯髄>骨由来細胞の順に高く、骨分化能は骨と歯髄にあるが骨膜と歯肉由来細胞には認められなかった。 このようなデータの結果を踏まえ、来年度は骨と歯髄中に存在するヘテロな細胞集団を、表面抗原の相違により分取し、特に骨分化の高い細胞集団に共通した表面抗原マーカーを探索していきたい。
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