研究概要 |
今年度は主にヒト歯肉と歯髄組織に存在する歯槽骨再生用細胞を分取するために以下の研究を行った。(1)インプラントの二次手術時に不要となり、患者の同意を得て得られたヒト歯肉から、酵素分散法とアウトグロース法のどちらから多くの細胞を得られるかを検討した。様々な酵素を検討した結果、Type Iコラゲナーゼとディスパーゼによる組織分散法にて最も多くの接着細胞が得られることが判明した。 (2)ヒト歯肉と歯髄組織から増殖した細胞をCD146,166,271,Stro-1を指標としてEACSによる陽性率を検討した。その結果、歯髄細胞では陽性率の高い順にCD166>271>146=Stro-1であり、歯肉細胞ではCD166>146>271=Stro-1であった。 (3)次いでヒト歯肉と歯髄細胞中に存在するヘテロな細胞集団を、表面抗原の相違によりMACSシステムの磁気ビーズシステムにより分取を試みた。そして分取した陽性細胞と非陽性細胞をそれぞれ骨分化誘導培地にて培養し、アルカリフォスファターゼ活性とアリザリンレッド染色を経時的に行った。その結果、歯髄細胞においては、CD166とCD271陽性細胞群が非陽性細胞郡に比べて明らかに高いアルカリフォスファターゼ活性を示し、アリザリンレッド染色性も高かった。一方歯肉細胞においては、CD166陽性細胞群が明らかに高いアルカリフォスファターゼ活性を示し、アリザリンレッド染色にも濃染した。他の抗体で分取した細胞群では顕著に高いアルカリフォスファターゼ活性は認められなかった。 以上の結果から、口腔内組織から歯槽骨再生能を持つ細胞を分取するために、CD166が有効であるということが判明した。
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