著者らは、チタンインプラントを希薄(10〜20mmol/L)な塩化カルシウム水溶液を用い、200℃で水熱処理することによって、インプラント表面に微量のカルシウム(Ca)を含む酸化膜が形成され、骨類似のアパタイトの生成、および骨芽細胞の初期接着、増殖が促進されることを見出した。そこで10〜20mmol/Lの塩化カルシウム水溶液中で水熱処理を行ったチタンをラットの脛骨に埋入し、インプラントと骨の結合状態を検討した。インプラント試験片の埋入後、1週間で55%(未処理5.7%)、2週間で86%(未処理19.2%)、4週間で96%(未処理57%)という高い骨接触率を示し、骨とインプラントは高い割合で結合組織が介在すること無しに直接結合しており、埋入初期から強固な骨結合が得られる処理法であることが示唆された。 塩化カルシウム水熱処理を行ったチタンインプラントと骨との結合強度を検討するために、ラットの脛骨にインプラント試験片を埋入し、引き抜き試験を行った。塩化カルシウム水熱処理チタンは、埋入後1週間で1N/mm^2、4週間後で1.7N/mm^2という強度を示し、1週間後の強度は未処理チタンの4週間後に匹敵することが明らかとなった。 本処理法は、「耐初期微動性に優れ」、「早期の荷重負荷が可能」、「治癒期間の大幅な短縮が可能」、「強固な骨結合が得られる」画期的な表面処理法として期待できる。
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