研究概要 |
【目的】チタンは生体親和性に優れる反面、表面は皮膜で覆われるために細菌の付着しやすい環境となっており、生体親和性と細菌汚染という二律相反の関係にある材料である。近年、このチタンに抗菌性を賦与することを目的とした研究が盛んに行われている。そのような現状で、当研究室において開発された、陽極酸化処理抗菌性賦与チタンは、費用面、技術面、効果の面からしか領域における有効性の高い材料であると考えられた。今回、抗菌力向上および抗菌スペクトルの拡大を模索し、本材の歯科領域のみならず、より幅広い分野における利用の可能性を探ることを目的とする。【方法】以前報告した方法により陽極酸化処理チタンを作成する。その際、殺菌力向上を目的として、陽極酸化処理時間を0、10、20、30、40、50、60、120、180、240、300秒と変化させて抗菌性賦与チタンを得る。使用菌株として標準菌株としてStreptococcus mutansを用い、比較対照として臨床医学上問題となる、Staphylococcus aureus,Escherichia coli,Streptococcus pyogenesに対する殺菌作用を測定する。また、抗菌スペクトルを図る目的で病原真菌である、Candida albicans,Candida glabrataに対する抗菌作用を測定する。 【結果および考察】各作用時間における陽極酸化処理の効果を判定したところ、60秒の酸化処理時間が最適であること、そして、300秒以上の処理時間では逆に殺菌効果が減弱することが明らかとなった。陽極酸化処理チタンの殺菌効果は標準菌のみならず、S.aureus,E.coli,S.pyogenesに対しても効果があった。しかし、真菌であるC.albicans,C.glabrataに対する殺菌効果は最近に対する効果と比べて極めて弱いことが明らかとなった。以上の結果から、本材の殺菌作用は細菌特異的であり、細菌に関しては幅広い抗菌スペクトルを有する可能性が示唆された。
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