研究概要 |
申請者らは、生体内環境を重視し、AIやV以外の細胞毒性が指摘されていない元素(Zr, Nb, Ta)をチタンに添加し、長期予後を考慮したより高い生物学的安全性および機械的性質を有するTi-15Zr-4Nb-4Ta合金(以下,Ti-15-4-4)の開発を行っている。平成20年度は、生体用Ti-15-4-4合金およびコントロールとしてTi-6%AI-4%V合金をウサギ脛骨ヘインプラント(直径3.0mm、長さ7.0mm)の埋入を行った。そこで未だ解明されていないTi-15-4-4合金インプラント周囲に形成される新生骨の骨質および成熟のプロセスを観察することを目的とし,Micro-CT,偏光顕微鏡,FTIRイメージング装置にて分析を行った。試料は,ウサギ脛骨にインプラントを埋入して4週および8週後の非脱灰標本とした.Micro-CTでは,骨とインプラントとの三次元的な関係の観察を行った.偏光顕微鏡では,骨構造の成熟度について観察を行った.FTIRイメージング装置では,骨に含まれる分子(PO_4^<3->,CO_3^<2->,Amide I)と,骨の形成,成長との関連を経時的に観察した.以上3種類の手法を用い観察を行った結果,以下の結論を得た. 1 Ti-15-4-4合金インプラント埋入4週後,8週後では3つのいずれの分析手法においても,新生骨と既存骨の間には質的な差異が認められた.2 埋入4週後の新生骨と8週後の新生骨の間でも質的な差異が認められた.3 新生骨は,既存骨のそばから成熟していく傾向が認められた.4 今回用いた分析手法はいずれも試料が破壊されず,再現性のある結果を得ることが可能であった. したがって,これらの方法を用いることでTi-15-4-4合金インプラント周囲における新生骨の元素・分子レベルにおける質的評価を行うことができた。
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