研究概要 |
今年度は,アルツハイマー型認知症の要因と考えられている脳海馬の神経伝達物質遊離と活性酸素種による酸化ストレスの発現が,食物性状の違いにより脳内でどのような変化を及ぼすかについて検証を行った. 実験には,雄性Wister ratを用いた.3週齢の離乳直後より固形食飼育(以下H群)と粉末食飼育(以下S群)に分類し,それぞれ12週齢まで飼育を行い,飼育期間終了後以下の実験を行った. 実験1.脳内の酸化ストレスの評価:ラット尾静脈より酸化ストレス評価測定用スピンプローブ剤(MC-PROXYL)を投与した.30秒後に脳を摘出し電子スピン共鳴(ESR : Electron Spin Resonance)法を用い,脳内の酸化ストレス発現を評価した. 実験2.海馬内のドパミン遊離能の動態評価:マイクロダイアリシス法にてドパミン遊離量の検出を行った.還流液として高濃度カリウムを用いることにより,ドパミン遊離能の動態を検証した. 実験3.ドパミンと活性酸素種(ヒドロキシラジカル:HO)の反応性評価:過酸化水素溶液に紫外線を照射し発生させたHOにドパミン塩酸塩(Dopamine hydrochloride)あるいはL-Tyrosineを混合させることにより,反応性評価をin vitro X-band ESR法を用い行った. 脳内酸化ストレスの発現量は,H群と比較しS群において有意な増加が認められた(P<0.05).マイクロダイアリシス法によるドパミン遊離能は,高濃度カリウム刺激後,H群に比べS群において有意な減少が認められた(P<0.05).ドパミン塩酸塩とHOの混合によりHOを有意に消去し,L-Tyrosineとの混合より高い消去能を示した.以上の結果より,食物性状の違いによる顎口腔系への刺激の違いが,脳内の酸化ストレスの発現量とドパミン遊離能に影響を与え、そしてそれらには相互作用があることが示唆された.
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