研究概要 |
歯質接着の前処理剤としてセルフエッチングプライマー(SEP)を用いるデュアルキュア型レジンセメントの重合性に及ぼすSEP中に含有される酸性モノマーの影響を調べる目的で,市販の接着システムを使用して,SEPの歯面処理後のpH変化ならびに処理時間と重合様式による接着強さの変化を調べた。接着システムとして,新たに,pH1.56のSEPを用いるBistiteII(BI:トクヤマデンタル)とpH2.98のSEPを用いるResiCem(RC:松風)の2種を追加した。昨年度と同様に,これらのレジンセメントの牛歯象牙質およびアクリル板(PMMA)に対する接着強さをレジンセメントに光照射した場合(光重合)としない場合(化学重合)とで比較検討した。 1.研磨象牙質に対して各SEPを作用させると,そのpH値は上昇するものの,5分後でもBIで0.9,RCで0.3程度の上昇であり,処理歯面にはまだかなりの酸性モノマーが残存していること示唆された。 2.BIでは,SEPの処理時間10秒と30秒および光重合と化学重合の重合様式の違いにより象牙質に対する接着強さに有意な差は認められなかった。しかし,酸性モノマーがそのまま残存するPMMAに対する接着強さにおいては,光重合した試料の接着強さは化学重合した試料に比較して有意に高い値を示した。同様な傾向が,RCにおいても認められた。特にRCでは,PMMAに対する接着の際に専用のSEPの代わりに光重合型のレジンプライマーを使用した場合にはほとんど接着しなかった。 以上の結果から,各SEPに含有される酸性モノマーはレジンセメントの化学重合性に影響を及ぼしていることが示唆された。しかし,その影響を抑制するためにそれぞれのSEP中に第2の化学重合触媒が添加されているものと推察される。 なお,現在,昨年度試験した材料も含め4種のデュアルキュア型レジンセメントの象牙質接着の水中浸漬耐久性試験を続行しており,それらの結果も含めて,最終的な評価をする。
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