研究概要 |
我々はガラスファイバー強化型コンポジットレジン(以下FRC)の優れた審美性と機械的性質に注目し,クラスプへの臨床応用について検討してきた.その結果,アンダーカット量に相当する一定変位を繰り返し与えるクラスプ疲労試験から,12%金銀パラジウム合金と比較してもFRCは優れた疲労耐久性を示すことが明らかになった.しかし,疲労試験後の光顕像から,試料の引張側では観察されないき裂やガラスファイバーの剥離が圧縮側において観察された.FRCをクラスプに臨床応用するためには,この圧縮側からの破壊機構を明らかにする必要がある.そこで本研究では,FRC曲げ試料に4点曲げ荷重を負荷し,圧縮面と引張面の荷重とひずみの関係を調べた.次に比例限を越える一定変位を曲げ試料に繰り返し負荷する定変位疲労試験を行った.さらにクラスプ疲労試験において,試料の圧縮側と引張側に生じる最大ひずみの計測を行った. その結果4点曲げによる定変位疲労試験から,圧縮面でのみガラスファイバーの露出,マトリックスレジンやガラスファイバーの破壊と脱落が観察された.これは圧縮応力下と引張応力下では破壊機構が異なることを示唆している.また,比例限を超える繰り返し疲労に対しては,圧縮側がより危険であると考えられる. クラスプ疲労試験から,EGをクラスプに応用するためには断面形状を再考する必要性があることが分かった.比例限度内であればクラスプの断面形状を変化させても,圧縮応力による疲労破壊の可能性は少なくなるのではないかと思われる.
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