研究概要 |
本実験では,実験動物において,上顎臼歯を部分的に喪失させることによる,咀嚼能力および学習記憶能力の変化について加齢変化とともに検討するために行った. 実験に必要な老化促進モデルマウスP8(以下,SAMP8)の繁殖を行い必要な個体数を確保した後,2ヶ月齢時において,ペントバルビタールナトリウム投与による全身麻酔下で上顎臼歯を部分的に抜歯した.抜歯には耳小骨鉗子を用い,上顎左右第1,第2臼歯を喪失させる群,上顎左右第2臼歯のみを喪失させる群,および対照群として非処置群の3群に分けて行った.それぞれを5ヶ月齢または8ヶ月齢まで経過観察した後に,受動的回避実験による学習記憶能力の計測および,胃内容物の粒度分布の測定によって咀嚼能力の計測を行った. 学習記憶能力の測定に行った受動的回避実験にはSAMP8で学習記憶能力を測定するために有用とされているステップスルー型実験装置を用いた. 咀嚼能力の測定には堀場製作所社製,レーザ回折・散乱式・粒度分布測定装置LA920を用い,0.02マイクロメートルから2000マイクロメートルの範囲で粒子径ヒストグラムを測定した. なお,経過観察中は臼歯の喪失が全身に与える影響を観察するため,老化度,摂餌量,摂水量,体重等の計測を行った. 咀嚼能力に関しては,5ヶ月齢,上顎左右第1第2臼歯を喪失した群において,非処置群および上顎左右第2大臼歯喪失群と比較し,有意に低下することが明らかになった.
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