研究概要 |
口腔インプラント治療は、歯の欠損に対する予知性の高い治療法として確立されてきた。しかし、オッセオインテグレーションの獲得までに一定の治癒期間を要することが患者の負担となっている。この問題を解決する方法としてインプラントの周囲に骨再生を遺伝子治療により促進する方法が考えられる。ここでは、あらかじめ細胞に骨再生を促す遺伝子を導入した細胞を付着させた口腔インプラントを埋入する術式を考える。細胞への遺伝子挿入に用いるベクターは重篤な副作用の報告があるウィルスベクターよりも副作用が少ないことが期待できる非ウィルスベクターが望ましいと考える。しかし、非ウィルス性ベクターは遺伝子導入効率が低く、核への移行が起こりにくい。そこで本研究は、生体から取り出した細胞に遺伝子を導入して体内にもどす細胞遺伝子治療のための基礎的検討なとして、非ウィルス性ベクターの細胞への遺伝子導入効率の検討を行った。用いたベクターはレポータ遺伝子であるβガラクシトシダーゼ遺伝子をコードしたプラスミドDNAである。又,用いた細胞はSDラットの脛骨から骨髄細胞をフラッシュアウトして得た付着性細胞である。遺伝子導入法として、リポフェクション法、ソノポレーション法、さらに両者を併用した場合について検討した。そして、それぞれの場合の遺伝子導入効率と細胞毒性を検討した。また、ソノポレーション法については超音波の出力強度と時間が導入効率におよぼす影響を検討した。 その結果、リポフェクション法、ソノポレーション法、ではそれぞれコントロールと比較して遺伝子導入効率の向上を認めた。また、細胞毒性はリポフェクションにおいて濃度依存的に上昇したが、マイクロバブルを用いたソノポレーション法ではコントロール群と同程度に低く低出力超音波を用いた場合ではほとんど細胞毒性を認めなかった。ソノポレーションとリポフェクションを併用する場合は、細胞毒性が高くなることが示唆された。また、ソノポレーション法については超音波の出力強度と時間とプラスミドDNA濃度の間に最適条件があることが示唆された。条件が悪い場合には細胞毒性は上がり,遺伝子導入効率は低下した。
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