研究概要 |
今回の研究では基質としてハイドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム系化合物もしくは炭酸カルシウムとポリ乳酸ポリエチレングリコール共重合体を組み合わせたものを考え、そこにBMP-2ならびにMMPなどの分化・誘導因子を添加する実験系を計画している。その予備実験として、基質の材料としてハイドロキシアパタイトを用いて、インプラント初期固定に及ぼす影響の経時的変化についてを実験動物に犬を用い,インプラントと骨の接合強度,すなわちインプラントを除去するときの値(リムーバルトルク値)を測定して検討した。 実験動物には,成犬(ビーグル犬,体重約11kg)4頭を用い,実験部位は両側の大腿骨中央とした.全身麻酔下で皮膚を切開,骨膜を剥離した後に,φ1.2mmのドリルによって骨の切削を行った.その後,ハイドロキシアパタイト薄層純チタン製矯正用ミニインプラント(φ1.2×6mm,Orthoanchor K1 system,デンツプライ三金)と同時埋入し,皮膚を縫合した(ハイドロキシアパタイト群).なお,ハイドロキシアパタイトを用いていないものを対照群とした.埋入後3週,6週,9週,12週のインプラントについて,ハンディータイプトルク計(HTG-2N,イマダ)を使用して,リムーバルトルク値を測定した. その結果,インプラント埋入後3週におけるリムーバルトルク値は,対照群に比べハイドロキシアパタイト群で有意に大きいことがわかった(p<0.05).なお,インプラント埋入後6週,9週,12週におけるリムーバルトルク値は,ハイドロキシアパタイト群と対照群に有意の差はなかった. この結果は,基質としてのハイドロキシアパタイトがインプラントと骨の接合に対して,インプラント埋入の初期段階で有効に働いていることを示しており,インプラント制御に必要な諸条件を備えていることがわかった。
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