う蝕、歯周病、外傷などにより生じた歯の喪失に対する咬合回復は、歯冠補綴や義歯などによって行われてきたが、近年、健全歯保存などを含めインプラント治療が行われるようになってきた。しかし、上顎臼歯部では、上顎洞の存在によりしばしば骨移植すなわち上顎洞挙上術が必要となる、従来より骨移植には自家骨が多く使用されているが、骨採取部位の問題、骨採取量の限界などにより口腔外からの骨採取を求めるのが必須となり、すべての面において患者への負担が増すのが現状である。これらを解決するために 、本研究では患者に二次的な侵襲を加えることなく骨の増生を行うことができるかについて、家兎の副鼻腔に人工的な骨欠損部を形成しPRPとOCPを用いて骨の増生が可能かどうか組織学的に検討を行ことである。これにより将来的に骨移植を必要とするインプラント治療患者に対して、従来からの口腔内外からの骨採取を行うことなく骨の増生を行うことが可能となり、患者の負担を軽減し、インプラント治療の適応拡大につながることとなる。 実験動物としての家兎より20mlの採血を行い、SmartPReP2(ハーベスト社)のダブルスピン法による遠心分離を用いてPRPの分離を行い、さらにPRPゲル作製のための専用アプリケーターを用いてPRPゲルを作製する。家兎の両側副鼻腔に対して上顎洞挙上術の術式に準じて骨欠損部を形成する。 まず家兎の両側副鼻腔に上顎洞挙上術に準じて骨欠損部を形成し、右側にはコンロトール群として骨欠損のみを形成する。左側は実験群として、OCP単体、自家骨(海綿骨骨髄)、PRPゲルを移植したものとする。術後、2週、4週、6週、8週、10週と屠殺を行い副鼻腔を含む顎骨を摘出し、エックス線撮影を行い、現像した後に移植骨の状態とコントロール群を比較して骨の解像度等についてX線形態学的に検討を行う。一方、エックス線撮影を終了した摘出標本は、EDTA脱灰溶液にて10日間脱灰を行い10%ホルマリンで固定後、通法に従い脱水、透徹パラフィン包埋する。厚さ約4ミクロンの薄切切片を作成し、ヘマトキシレン-エオジン染色を行い検鏡し、コントロール群との骨増生(新生骨の形成)および骨吸収について組織学的に比較検討を行う。
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