【緒言】動脈硬化性疾患を有する患者の全身麻酔は著しい血圧変動を伴い、特に麻酔導入・気管挿管時は顕著である。本研究では、麻酔導入・気管挿管時の血圧変動を予測する目的で、脈波伝播速度(Pulse Wave Velocity;PWV)および中心動脈圧(Augmentation Inddx;AIを含む)の測定値と、麻酔導入時の血圧変動との相関について検討した。 【対象および方法】対象は、大阪大学歯学部附属病院において全身麻酔が予定された40歳以上の患者94名である。手術前日の16〜18時の間に、室温25℃の静かな部屋で、血圧(収縮期、拡張期)、脈拍数、ABI-form^<TM>にて上腕-足首brachial-ankle PWV(baPWV)およびHEM-9000AI^<TM>にて中心動脈圧、AIを測定した。また、降圧薬の内服の有無を調査した。 【結果】1.年齢、PWV、中心動脈圧および術前収縮期血圧は、降圧薬非内服症例よりも降圧薬内服症例の方が有意に高かった。2.全症例において、中心動脈圧は、麻酔導入時の収縮期および拡張期血圧の低下および上昇によく相関していたが、PWVは両血圧の低下にのみ相関していた。3.降圧薬内服症例では、中心動脈圧は、麻酔導入時の収縮期および拡張期血圧の低下および上昇によく相関していたが、PWVは収縮期血圧の低下にのみ相関していた。4.降圧薬非内服症例では、中心動脈圧およびPWVともに、麻酔導入時の収縮期および拡張期血圧の低下にのみ相関していた。5.AIは、いづれの項目においても相関はみられなかった。 【考察と結語】中心動脈圧は、麻酔導入時の血圧低下および気管挿管時の血圧上昇の両方に相関し、血圧変動の良好な予測因子であると考えられた。特に、降圧薬内服症例では血圧低下および上昇ともによく相関していた。
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