研究概要 |
本研究では、唾液腺腺癌細胞および野生型KGFR遺伝子を導入した唾液腺腺癌細胞における遺伝子の発現を個々に捉えるのではなく,体系的に,網羅的に解析した。また、癌遺伝子や癌抑制遺伝子産物の蛋白の構造や機能の変化のみならず,それに連動した結果の蛋白質発現量変化や翻訳後修飾の変化を含めた全体を記載した。さらに,shRNA発現ベクターを用いてFGFR1-IIIc遺伝子を発現抑制することにより、FGF2-FGFR1-IIIc系シグナルを遮断し,FGFR1-IIIc siRNAを導入された細胞の増殖能は低下した。これらFGF-FGFRシグナルを操作することにより誘導された細胞分化・アポトーシス・増殖抑制に関連する遺伝子・蛋白質群について,cDNAマイクロアレイおよびプロテオーム解析にて検討した。その結果、野生型KGFR遺伝子導入することにより、963遺伝子の発現量が上昇し、396遺伝子の発現量が低下した。変動した遺伝子のうち、アポトーシス関連遺伝子が24種類、癌関連遺伝子が17種類、細胞周期が46種類、シグナルtransducerが42種類が含まれた。FGFR1 siRNAを導入することにより、512遺伝子の発現量が上昇し、927遺伝子の発現量が低下しました。変動した遺伝子のうち、アポトーシス関連遺伝子が18種類、癌関連遺伝子が11種類、細胞周期関連遺伝子が27種類、シグナルtransducerが37種類が含まれた。KGFR導入細胞とFGFRI siRNA導入細胞間で発現遺伝子群を比較すると。上昇した遺伝子群のうち、90-kDa heat-shock protein、DDX1,DDX21,dead box, X isoform, mitotic control protein dis3 homolog DIS3, tumor rejection antigen、 TRA1など45遺伝子はoverラップし、低下した遺伝子群のうち、creatine kinase, laminin-alpha 5,PX serine/threonine kinase(PXK), receptor protein tyrosine kinaseなど59遺伝子がOverラップした。 次に、FGFRと連動する蛋白質群をプロテオーム解析にて検討した。平均2倍以上異なるスポットが86個検出された。上昇した蛋白質は癌抑制遺伝子APCと連動するEB1,p53と連動するLITAF, bax, smacなど、低下した蛋白質はDNAの損傷、修復に関連する蛋白質TopBP1,蛋白質の分解を阻害するPI31などが含まれた。一方、FGFR1 siRNAを導入することにより、変動した蛋白質スポットが102個検出された。上昇した蛋白質にはHsp40,60,75,110など、低下した蛋白質にはNF-kb, Rb, Ku70,80など転写因子が含まれた。
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