顎骨破壊性病変である角化嚢胞性歯原性腫瘍の詳細な発育機構については未だ不明な点が多い。顎骨内での発育には病変周囲の骨吸収が不可欠であるが、骨吸収にはカテプシンやマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)などの蛋白分解酵素の産生や破骨細胞の分化誘導と活性化が必要で、その制御に炎症性サイトカインの関与が示唆されている。本腫瘍では、炎症性サイトカインであるインターロイキン-1α(IL-1α)が強く発現している事を我々は明らかにしている。本研究ではまず、IL-1αの腫瘍を構成している角化嚢胞性歯原性腫瘍由来線維芽細胞におけるCyclooxygenase (COX)-2 mRNAの発現について検討を行った。その結果、IL-1αは線維芽細胞においてCOX-2の発現を高め、プロスタグランディンE_2(PGE_2)の産生を増し、そのPGE_2は線維芽細胞自身に作用して破骨細胞の分化誘導因子であるマクロファージコロニー刺激因子やreceptor activator of nuclear factor κB ligand(RANKL)の発現を間接的に増強させることが明らかとなった。また、角化嚢胞性歯原性腫瘍由来線維芽細胞の細胞膜上にはカルシウム感受性受容体が発現しており、細胞外カルシウム濃度の上昇がそのカルシウム感受性受容体を刺激してCOX-2の発現を高めてPGE_2の産生を増強させることが判明した。この事より、骨吸収によって遊離したカルシウム自体が骨吸収をさらに増強させると考えられた。以上より、IL-1αが本腫瘍の骨破壊の初期において重要な役割を演じる事が明らかとなった。19年度では、RNA干渉によって角化嚢胞性歯原性腫瘍由来線維芽細胞による骨破壊の抑制の可能性について検討する。
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