我々はオステオポンチン(OPN)の遺伝子をクローニングし、その構造を明らかにした。機能解析により、OPNは多彩な機能を有することが明らかとなるが、癌細胞が顎骨に浸潤する際にも破骨細胞が活性化されて骨吸収が生じ、OPNの関与が示唆されているが詳細については明らかにされていない。 今回、我々が作成したOPNを過剰発現するトランスジェニック(OPN-TG)マウスを用いてOPNが癌浸潤に果たす役割を検討した。OPNにはGRGDS配列をはじめ機能的に多彩なドメインを持っており、これら各ドメインがいかに癌細胞や破骨細胞と関わっているか調べることで癌浸潤、転移への関与を解析できる。 1.OPN-TGマウスにおける癌の骨浸潤および転移の解明 マウスメラノーマ細胞株をOPN-TGマウスおよび野生型マウスの下顎歯肉および皮下に移植、あるいは静注して癌細胞の増殖や転移に差異があるかを検討した。その結果、下顎中切歯問に移植し、セメント質、象牙質への浸潤を検索したが、野生型、OPN-TGマウス共に浸潤を認めず、差異が見られなかった。皮下に移植した癌細胞増殖、浸潤にも差異は認められなかったが、癌細胞の肺転移抑制がOPN-TGマウスに認められた。OPNのリコンビナント蛋白「リ蛋白」投与実験でも確認できた。 2.OPNの・各種「リ蛋白」作成およびペプチド合成 全長およびGRGDS配列を含む「リ蛋白」の作成とGRGDS配列をはじめ、いくつかの機能部位と考えられる「リ蛋白」の作成を試みたが、発現を確認できなかった。そこで、種々の機能効果を示すと予想されるペプチドを合成して、in vivoでの効果を検討するとGRGDS配列を有するペプチドに癌転移抑制効果を認めた。
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